マネジメントメッセージ
日本イーライリリーのリーダーのビジョンとミッション
バイスプレジデント・執行役員
研究開発・メディカルアフェアーズ 統括本部担当
吉川 彰一
かつては、「Technology Push」を謳っていた各産業が、どんどん「Market Pull」指向に移行していく中、医薬品業界は今や残された数少ない「Technology Push」型産業であると言えます。つまり、医薬品業界における成功の可否は、その企業の開発力に依存しているといっても過言ではなく、科学や技術を志し学んで来た者にとって、これほどやりがいのある職場はありません。私が日本イーライリリーに入社して一貫して試みてきたことは、開発のアウトプットを最大化し、イーライリリーの革新的新薬を一日も早く日本の患者さんにお届けすることでした。 結果として、開発プロジェクトの数は、この10数年の間に4倍になりました。 劇的な量的変化のみならず、開発のやり方が質的に大きく変わったのもこの10数年の歩みです。 つまり、以前は日本における医薬品開発は、欧米から5年以上遅れて、欧米ですでに実施された臨床試験を日本で繰り返すかたちで行われていましたが、現在では世界同時開発が当たり前になりました。実質、イーライリリーにおいては全プロジェクトの80%以上が世界同時開発で進行しています。 製薬業界団体主導のアンケートによれば、日本イーライリリーは開発プロジェクト数および世界同時開発の比率において業界トップクラスを誇ります。 これこそが、「Technology Push」型産業の医薬業界において、日本イーライリリーが過去10年近くの長きに渡り、常に業界トップクラスの企業成長率を維持することが出来た根源であると自負をしているところです。 昨今、医薬品開発は以前に比べてより複雑化し、新薬開発に要するコストも膨大化してきていますが、そのような厳しい状況においても、今後もより高いレベルでの開発アウトプットを維持し、革新的新薬を欧米に遅れることなく届け続けることが我々の使命であると認識しています。
世界同時開発においてグローバル試験に参画するにはさまざまな困難を伴います。それまで日本単独の試験では、日本人や日本の現場に合わせた試験計画を柔軟に組むことができましたが、グローバル試験ではさまざまな人種と国、医療プラクティスが混ざり合ったなかで通用する試験計画を組まなければなりません。このため、日本の開発担当者たちは、従来の日本人だけですべてを決めてきた体制から、メール、電話会議やアメリカ本社への出張を通じて本社チームとの信頼関係を深め、リリーグローバルの一員として働いていく体制に変革してきました。その結果、以前は日本から数名参加するのがやっとだったグローバル試験に、近年では日本が最大人数の参加国になることもあり、なかには日本が世界最初の承認、上市国になるプロジェクトも出てきています。
日本が世界同時開発に参画するだけでなく、リードできる体制が整ってきたといえるでしょう。今後は日本発の医薬品や新規適応症を世界の患者さんにお届けし、日本から世界にイノベーションを発信していくことを推進していきます。この歩みを通じて、今後は世界の土俵で世界同時開発をリードする真のグローバルリーダーを日本から一人でも多く輩出したいと心から願っています。